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街のコミュニティースペースとして進化するコンビニ ファミリーマートがイートイン店舗を展開する理由とは?

最近、コンビニ店内でコーヒーを飲んだり、軽食やスイーツを食べたりして一息つく人たちの姿をよく見かけます。
実はこのイートインスペース(※1)は、ファミリーマートが圧倒的に多いことをご存知でしょうか。スペースの効率化を最優先するコンビニにとって、イートインスペースの確保はどのような利益を生むのでしょうか。47都道府県で約12,000を超える店舗を展開するファミリーマートの広報担当者に、イートインサービスのニーズや購買を呼び起こす店づくりの秘訣についてお話を伺いました。
(※1) 店で買った食料品をその店内で食べること。
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イートインサービスが求められる時代背景
これまでコンビニは、限られた売り場面積で販売の効率化を競ってきましたが、大手3社の中でもファミリーマートは積極的に、集客ツールとしてイートインスペースを重視した店づくりを展開しています。
2015年には、2017年度末までに約6,000店舗にイートインを設置する方針と発表。東京や大阪など都市部には、2階など別フロアにイートインスペースを備えた新しいスタイルの店舗も増えています。「地域のコミュニティスペースとして、さまざまなお客さまにご利用いただきたいとの思いから展開を強化しました」と、広報担当者は語ります。同社がイートインスペースの積極展開を開始したのは2013年から。高齢化社会、女性の社会進出・単身世帯の増加などの時代背景から、幅広い世代がコンビニを利用する中、休憩スペースとして需要があるとの見立てでしたが、その予想をはるかに超え、現在では地域のカルチャースクールや行政からの情報発信スペースとして利用されている店舗もあるそう。
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くつろぎを提供するイートインスペースの内装の工夫とは
大阪市北区のオフィス街に位置する『ファミリーマート西天満六丁目店』。官公庁や事業所などが立ち並ぶエリアで、ビジネスパーソンの利用を見込んだ2階建ての”都市型店舗フォーマット”として2014年に開店しました。2階店内は、合計26もの席数を備え、ブラウンを基調とした壁面とウォルナット調の木目柄のテーブルを採用しています。また、照明は1階の販売スペースよりも照度を下げたLEDのダウンライトと、各テーブルに暖色系のペンダントライトを配置。また、階段部分を吹き抜けとし、ガラス面を広く確保して外光を多く取り入れることで、開放的で心地よいカフェのような空間を提供しています。「落ち着きを与える内装にすることで、特に女性の来店動機に結びついているのではないか」と、広報担当者は分析します。また、セルフで利用できる電子レンジや電気ポットが備え付けられ、利用者からは「購入した商品をその場で食べられる手軽さがうれしい」といった声も多く、時間に追われるビジネスパーソンだけでなく、コミュニティースペースとして利用する主婦など幅広い層から好評だそう。また、テーブル上には1階で購入できるオリジナルコーヒーブランド『ファミマカフェ』のメニュー表が置かれており、“ついで買い”による相乗効果も期待されています。
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まとめ
また、昨年には吉本興業とコラボし、イートインスペースや駐車場を利用して寄席や体操教室などを実施する『いっしょに、笑顔。“ちいきイキイキプロジェクト”』を始動。ファミリー層からシニア層まで幅広い年代の集客や、地域のつながりや一体感をサポートするという目的もあるといいます。イートインスペースを設置した店舗を、今後の基本対応としてさらに拡大していくという経営方針が成功し、売り上げ増加につながれば、他のコンビニチェーンも対抗して設置拡大に本腰を入れるとみられています。これらの動きは、小売店と外食店との垣根を崩すのではないかと注目されていることから、イートインスペースで食べることを目的とした商品の開発や、エリアや客層に合わせた内装の変化などもさらに活発になると予想されます。
例えば、子育て世代が多い地域では、幼児用のお菓子や離乳食などの品揃えを充実させたり、イートインスペース内にぬいぐるみやおもちゃを置いて楽しく遊べるようにしたりするなど、子育てに特化したコンビニがあると助かります。幼い子どもがいると、気軽に入れる飲食店が少ないと悩む声をよく聞きますが、コンビニがその役割を担えれば、サードプレイス的に利用する人も増え、ますます生活に必要不可欠な存在になるのではないでしょうか。
取材協力
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