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関西大手クリーニングチェーン店が始めたカフェ併設のコインランドリー。その”ねらい”とは?

前の記事では、共働き世帯が増える中、夫婦間の「洗濯」に対する意識調査を紹介しました。そこで、「洗濯」において便利なコインランドリーの利用経験がある方はどのくらいいるでしょうか。
コインランドリーには、暗い、汚い、怖い・・・といったイメージがあり、現在、日本では全人口の2割程度しか利用者がいないと言われています。その様な中で大阪を中心にクリーニング事業とコインランドリー事業を展開する株式会社ノムラクリーニングは、2016年7月にカフェ併設のコインランドリー「ニノーバル・ウォッシュ・カフェ®」(大阪府・吹田市)をオープンし、これまでのコインランドリーに対するイメージを刷新。そして新たな顧客層を獲得し、全国のクリーニング業界や飲食店業界で注目を集めています。新業態オープンのきっかけについて、同社の経営企画室長 兼 営業本部長である米田氏に聞きました。
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“共働き世帯”“子育て世帯”をターゲットに、家事の「時短術」を提案。
※左より、米田氏・三木氏(営業本部 店舗拡充部)・岡嶋氏(営業本部 店舗拡充部 副部長)
同社は昭和32年に創業。現在は大阪府を中心に奈良県、兵庫県、京都府で247店舗(※1)を展開。今後も更に各地域での店舗数拡大と、郊外へも多くの新店舗を展開していく計画です。
また、過去には広告宣伝の一環として、ハローキティを業界で初めてキャラクター起用するなど、認知拡大を行ってきました。しかし、昨今の時代の移り変わりから『消費者のニーズに沿った“ライフスタイル”を提案することで、人々の生活がより豊かになるのでは。』と考え、社内で新たなプロジェクトが発足。さっそく分析して行くなかで、九州地方では黄砂や火山灰の影響で、洗濯物を外に干すことができず、コインランドリーの利用者が比較的多いことが分かりました。一方、首都圏や近畿地方では、タワーマンションの建設が増え、景観上、高層階では洗濯物を干すことを禁じられる状況が増えるなか、人口に対してコインランドリーの店舗数が圧倒的に少ないことが分かりました。
従って、日本では全国的にコインランドリーの利用率がまだまだ“わずか”であることに着目し、『日常の洗濯を“しなければならないもの”から“したくなるもの”へ。』というコンセプトで、「ニノーバル・ウォッシュ・カフェ®」をオープンさせました。
『主に“共働き世帯”“子育て世帯”の女性をターゲットに、家事の「時短」をしながら、おしゃれな空間で安心してお洗濯したいと言う潜在的なニーズの叶う店舗を創った。』と米田氏は言います。
(※1)同社のクリーニング店舗・コインランドリー店舗の合計数。2016年12月現在
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汚れ物のイメージを全く感じさせない、すっきりと“清潔感”のある店舗デザイン。
「ニノーバル・ウォッシュ・カフェ®」を現地取材させていただきました。
先ず、外から見ると、 まさか コインランドリーとは思えない建物です。そして利用者には欠かせない広い駐車場が完備されています。店内に入ると、洗濯物に対する汚れ物のイメージを全く感じさせない、モノクロを基調とした、すっきりと“清潔感”のあるデザインで統一されています。
衛生上、左手は「お洗濯エリア」、右手は「カフェエリア」と区切られていますが、中央にオープンキッチンを持ってくることで全体の見通しがよく、1つのまとまった空間として捉える工夫がされています。また、コインランドリーの機械には、有名なイラストレーターが手がけた“水族館”をイメージさせるイラストが描かれており「カフェエリア」から「お洗濯エリア」を覗くと、まるで機械が店内の壁紙の一部に見え、くつろげる空間として工夫されています。また、「衛生管理」もしっかり行き届いており、今までコインランドリーを利用したことがない人も安心して洗濯ができます。特に、これからの花粉の季節やPM2.5などで外干しができない日は、来店するだけで家事の「時短」が可能。
『コインランドリーを利用する場合、洗濯から乾燥まで約1時間かかりますが、その待ち時間を家族や友人とカフェで有意義に過ごせる新しい“ライフスタイル”を提供しています。』と米田氏は言います。まさに、ネガティブな家事のイメージからの“逆転の発想”です。
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有名パンケーキ店とのコラボレーションで日本初“ウォッシュカフェ”を実現。
『日本人にコインランドリーを利用してもらいやすく、また、待ち時間を有意義に過ごしてもらうために、最適なカフェとは何か・・・?』。米田氏をはじめ、同社プロジェクトチームは、ひたすら食べ歩いて、飲食店業界を徹底的にリサーチ。そこで、大阪で希少性の高い、ふわふわの「夢みるパンケーキ®」を提供する「ニノーバルカフェ®」に出会います。さっそく社内を説得し、コラボレーション企画を持ち込み、その場でフランチャイズ独占契約を獲得。
人気の秘訣は、「夢みるパンケーキ®」だけでなく、無添加・自家製にこだわった自慢の商品提供を行うことにより、1つの統一された空間の中で「お洗濯エリア」「カフェエリア」の双方のブランドバランスがうまく保たれているところです。
そして、米田氏の積極的な行動によって、コインランドリーと“有名”パンケーキ店のコラボレーションが実現し、双方の店舗の認知拡大と新たな顧客層を獲得することになっていくのです。
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まとめ
同カフェは、今年3月に2号店(大阪府・泉大津市)をオープン。閑静な住宅街にある郊外型の「吹田紫金山店」とは異なり、南海電鉄•泉大津駅付近に立地したターミナル型でさらに新たなターゲットを取り込む予定です。二店舗で得た経験を生かし、出店に最適な立地を分析し、今後5年間で約10店舗の出店計画を目標にしているそう。
クリーニング業界では「宅配ネットクリーニング」など、新しく便利なサービスも増えていますが、消費者に対する、同社の努力とひたむきな姿勢、そして消費者の“ライフスタイル”の変化における潜在的なニーズと、店舗が発信するコンセプトがマッチすることで、実店舗において新たな顧客層の取り込みに成功していると言えます。店舗づくりや新しい目線でのお客様のニーズ抽出のヒントになるのではないでしょうか。

「“品質日本一”に向かって、お客様満足を向上させることを目標に、着々と店舗展開してまいります!」
米田 健太郎(よねだ けんたろう)
株式会社ノムラクリーニング 経営企画室室長 兼 営業本部長
取材協力
■株式会社ノムラクリーニング
大阪府八尾市高美町6-3-4
TEL 072-997-3981
http://www.nc-nomura.com
■ニノーバル・ウォッシュ・カフェ® 吹田紫金山店
大阪府吹田市岸部北4-15-2
TEL 06-6380-9666
http://www.nc-nomura.com/store/info_sikinzan.html
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