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結婚式は自らデザインする時代へ 想いをカタチにした空間をつくる“オリジナルウエディング”

もうすぐ、ジューンブライド。
近年は海外リゾートウエディングや1.5次会と呼ばれるカジュアルなものまでそのスタイルは多様化していますが、結婚式を行う場所としては、ホテルとゲストハウスが共に33.8%と、この二つによって日本の結婚式会場のシェアの半数以上を占めているのが現状です。※1
そんななか、最近よく耳にするのが”オリジナルウエディング”という言葉。オリジナルウエディングとは、従来の会場主体の結婚式とは違い、自分たちで決めたテーマやコンセプトに沿って、場所や進行、演出など全てをオーダーメイドでつくる新しい結婚式のスタイルです。
今回は、そんなオリジナルウエディングへの高まるニーズとその理由について、大阪のウエディングプロデュース会社「WEDDING DESIGN LAB°_(ウエディングデザインラボ)」のプランナー兵庫裕美さんに聞きました。
(※1 サンケイリビング新聞社調べ「結婚についてのベース調査2014」より)
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日本で画一化された結婚式が量産される理由
WEDDING DESIGN LAB°_は、大阪梅田にあるLUCUA1100(ルクアイーレ)内の蔦屋書店の一角に相談カウンターを設置しています。従来のブライダルサロンのイメージとはかけ離れた本屋という場所に出店するメリットについて、プランナーの兵庫さんはこう語ります。
「私たちにとって本屋は、結婚式を考えているお客様と出会える場所だと考えています。なぜなら現在の日本では、結婚が決まったあと、まず結婚情報誌を手に入れて会場を探すところからはじめられる方が多いからです。」
そして、そこにはオリジナルウエディングを提唱するWEDDING DESIGN LAB°_ならではのもう一つの狙いがありました。「私たちは日本の結婚式をつくる流れを根本から変えていきたいと思っています。新郎新婦が会場選びに使う結婚情報誌は、ページのほとんどを会場となるホテルや式場の写真が占めています。そのため、新郎新婦は外観の好みで会場を選択することになるため、会場側が設定した時間に縛られた進行になったりと、結果的に新郎新婦の表現の幅が狭まってしまいがちになります。」
兵庫さんによると、結婚式の準備を会場選びからはじめるのは、現在、ホテルやゲストハウスでの結婚式が主流である日本特有のものだそう。欧米では、新郎新婦がつくりたい結婚式を形にしてくれるプランナーを探すことからはじめるため、結婚式に対する自由度が高く、森の中やワイン農場など、時間や規制に縛られない開放的な場所で行う人が多数を占めるのだとか。
「私たちは、まず新郎新婦に“結婚式を通じて伝えたい想い”についてヒアリングすることからスタートします。そうして引き出した想いをテーマ化した上で、それを実現させるための方法と会場を探していくのがオリジナルウエディングの流れです」と、兵庫さん。
ニーズの高まりは感じるものの、まだまだオリジナルウエディングを実現する方法を知らないという人がほとんど。そのため、お客様が気軽に立ち寄れる本屋に出店することが、WEDDING DESIGN LAB°_の存在をアピールする良いきっかけになっているといいます。 -
“オリジナルウエディング”と“花嫁DIY”シンクロする時代の背景とは
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現在の日本の主流である、挙式と披露宴を同じ場所で行う“総合結婚式”の流れになったのは1960年代から。
それまでは神社で挙式をした後、公民館のような公共施設で披露宴を行うのが一般的でしたが、64年の東京オリンピックで、東京に大型ホテルが続々とオープンしたことが契機となりました。オリンピック終了後、ホテルの施設を結婚式会場として使う流れが生まれ、そこから当時の皇族や人気芸能人が相次いでホテルで結婚式を行ったことから全国的な流行へと発展していきました。そして2000年代になり、ゲストハウスウエディングが誕生。海外邸宅をイメージしたおしゃれな外観と、ゲストハウス側の「自分たちだけの結婚式場」という宣伝により、それまでのホテルや専門式場で行う画一化された結婚式に窮屈さを感じはじめていた層が一気にゲストハウスウエディングへと流れました。そして近年、台頭したオリジナルウエディング。その背景について兵庫さんはこう分析します。
「どの業界でも同じだと思いますが、新しいサービスも何年か経つとそれがスタンダードになってしまいます。また、2005年頃からSNSが普及し、情報を簡単に入手できるようになったことが大きいのではないでしょうか。ゲストハウスはホテルや結婚式場よりも自由度が高いところが魅力ですが、海外の結婚式の写真を見たり、ブログを読む人が増え「海外では時間や場所に縛られず、もっと自由で個性的な結婚式をやっている」というのをみんなが知りはじめたのです。そして、そんな結婚式に対するニーズの受け皿となっているのがプロデュース会社やフリーランスのプランナーです。」
そして、オリジナルウエディングの流れとリンクするように“花嫁DIY(※2)”が盛り上がりをみせています。結婚式で使うアイテムや装飾を手作りする新婦が増えている背景について聞いたところ、
「これも、SNSの存在が大きいと思います。情報源が書籍からインターネットに移行したこともあり、まとめサイトやInstagramなどで新婦が結婚式の情報収集しているうちに、今までにはなかった花嫁同士の横のつながりが生まれました。同じ花嫁ということで全く知らない人たちとも情報共有が可能になり、自分がつくったアイテムをアップして、もっと多くの人に見てほしいという想いもあってDIYをする人が増えています」と、兵庫さんは語ります。また、今までの結婚式では、会場側があらかじめ用意しているアイテムの中から選択するという方法でしたが、オリジナルウエディングは何もない状態から作りだす必要があります。それでも、自分たちが決めたテーマやコンセプトに沿って、想いをこめて手作りするということに楽しさを感じているという方がほとんどだとか。オリジナルウエディングと花嫁DIYに共通するのは「自分たちの想いを伝え、結婚式をより意味のあるものにしたい」という気持ちが原動力になっているところではないでしょうか。
(※2「DIY」とは、「Do it yourself」の略語で、自己解決の理念のもとに、サイズからデザインまで自分好みのものを作りだすことを指す。近年では、ペーパーアイテムからウェルカムボードなどの会場装飾を手作りで行う新婦も増加し「花嫁DIY」と呼ばれ、SNSなどを通じて話題を集める)
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多様化が進む結婚式の中でも変わらない「想い」
そうしたSNSの存在により、人々は結婚式にさらなる自由と個性を求めるようになりました。
しかし、結婚式のスタイルが多様化しても、昔からずっと変わらないのは、「結婚式で感謝を伝えたい」という気持ちです。想いのこもった結婚式を作る秘訣について、兵庫さんはこう語ります。
「装飾にしても演出にしても、ただおしゃれなだけのものはゲストからすると魅力がないと思います。お金をかければ、もちろん本格的なものができますが、ゲストは完璧なものを見たいのではなく、手作りした中に、二人の姿が浮かぶもの、絆や感謝の想いが見えるものが感動を呼ぶのだと思います。新郎新婦にとって、結婚式をやって良かったと心から思えるのは、自分たちの想いや、ゲストに喜んでもらうために考えた演出が、感謝の気持ちとして届くということ。それがより良い形になるようにアドバイスしたり、DIYのお手伝いをするのが私たちプランナーの役割だと考えています。」
少子化や晩婚化が進むなか、結婚式を挙げないカップルが増えてきていることもあり、今後のブライダル業界は厳しい冬の時代だといわれています。しかし、「それは事実ですが、私たちは結婚式の魅力を知っているからこそ、この流れは止めなければならないと思っています。そのために私たちができることはシンプルで、“良い結婚式をつくり続ける”ということ。「結婚式っていいな」と思ってくれる人が増えるような結婚式をつくっていくことで、結婚式を挙げたいという人も増えていくと思います」と、兵庫さん。
自分のために知人が集まってくれる機会は、人生において結婚式とお葬式のたった2回だけ。だからこそ、その縁のつながりを感じられるものや、感謝を伝えられる機会としての結婚式をつくっていくことを大切にしたいと兵庫さんは語ります。
ニーズの多様化・自由化により、進化を続ける結婚式。しかし、「新郎新婦の想いを伝える場」として、より効果的な結婚式を作りあげることを追い求めていく限り、結婚式は不変の感動を与え続けるのだと思います。

「新郎新婦の想いを引き出し、ゲストに伝わる結婚式をつくります」
兵庫 裕美
株式会社MITAKA ウエディング プランナー
- 主な業務内容:オリジナルウェディングのプランニング
- 趣味:楽器演奏・海外旅行
- 経歴:出席した結婚式の、新郎新婦の想いとオリジナリティが溢れた演出に心を打たれたことがきっかけでウエディングプランナーを目指す。その後、神戸の結婚式場に入社。オリジナルウエディングをモットーに4年で240組の結婚式を手がける。一度はブライダル業界から離れたものの、半年で出戻り、WEDDING DESIGN LAB°_のプランナーとして新郎新婦の想いを結婚式として形にすべく、日々奔走している。
(取材協力)
WEDDING DESIGN LAB°_
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