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注目を集める人気の“DIY賃貸” 【後編】カリスマDIY主婦ブロガー久米まりさん活躍の理由とは?

DIY賃貸に実際に住んでいる方はどのような点に魅力を感じ、どのようなDIYを行っているのでしょうか。大阪在住の主婦である 久米まりさんは、自宅のDIY賃貸住宅で行ったDIYのビフォー・アフターを綴ったブログ『Smile Happy Sweet Home』が、月に100万PVを集めるなど大人気のカリスマDIYブロガー。そして、その注目度の高さから、前編で紹介したUR都市機構のモデルルームを手掛けたり、数々のワークショップを開催するなど活躍中です。
今回は、DIYを始めた経緯や、人気を集めるブログの発信方法、自身の経験から感じるDIY賃貸の可能性やDIY資材に望むことなどについてインタビューしました。
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① カリスマDIYブロガー誕生秘話。
《DIY例》和室リビング~壁の上から木材の板を貼り白ペンキで塗装。力加減でシャビー感を創出。窓枠はサッシ部分にSPF材をはめ込み白い木枠に。
―ご結婚後にDIYを始められたとのことですが、そのきっかけについて教えてください。
「結婚した当時、選んだ新居が『内覧不可』の物件でした。契約後、初めて室内を見ることができるというまるで賭けのような家選びをし、そのあまりの古さにガッカリしてしばらく落ち込みました。その後、換気扇をつけるためホームセンターに行ってみたところ、木材や壁紙、ペンキなど、なんでも売っていることに気がつきました。それまで『DIY』という言葉すら知りませんでしたが、“与えられた状況に落胆して終わるよりも、何かできることにチャレンジしてみよう”と思いました」。
―ホームセンターに行ったところからスタートしたんですね! そこから、久米さんが最初に行ったDIYは何ですか?
「最初は、床を畳からフローリングに変えてみるところから始めました。すると、世界が一変! ガラリと変わった我が家に、この古い空間に無限の可能性を感じずにはいられませんでした。そうして知識も技術もゼロのまま見よう見まねでDIYを重ねていき、絶望するほど大嫌いだった家が大好きになりました」。
―DIYブログとして月に100万PVと、大人気の『Smile Happy Sweet Home』ですが、ブログを始めた理由は?
「DIYを始めてから、日本のどこかにあのときの自分のように、ひどく落ち込んで家を好きになれないでいる人がいるのかもしれないと思い、DIYには人生を変える力と魅力が詰まっているということをブログに綴りたくなったんです。ちなみにDIYという言葉を知ったその日まで、私はモノづくりどころか、インテリアにすら興味がありませんでした。あのとき、この家に住まなければ、私は今でもDIYの素晴らしさに出会えていなかったのだと思います。今では人生の楽しみ方を教えてくれたこの家に感謝の気持ちでいっぱいで、それが一番の原動力ですね」。
―ブログにはどのような質問や反響が多く寄せられますか? また、掲載するコンテンツで反響の多いものを教えてください。
「『 DIYって何から始めたらいいですか?』という質問が多いです。私もそうでしたが、変えたいと思っても、まずどこから手を付けるといいのかが分からないものですよね。最近の読者の傾向として、大がかりなDIYよりは“100均のリメイク”など、手軽で安くできるものに興味を持たれる方が多いように思います」。
―それでは、ブログで人気を集める秘訣について教えてください。ブログを更新する際、書き方に何か工夫されていることはありますか?
「DIYを始めようと思い立ったとき、私はまずDIYに関する本を読んでみたのですが、載っている設計図などが難しすぎて嫌になり、読むのをやめてしまいました。そんな経験もあり、自分が書くブログには、とにかく失敗も成功も包み隠さず書いていこうと思いました。“工程はなるべく分かりやすく”というのがモットーです」。
―なるほど。確かに、設計図って難しくて初心者にはハードルが高く感じます。久米さんのブログは失敗談も書かれていて、クスッと笑えたり、親近感が湧いて「また見にこよう」と思いますね。
「ありがとうございます。あとは、工程を省略せずにしっかり書くと長くなってしまうため、何回かに分けて連載記事にしたりしています。そして、万人に受け入れられようとせずマイペースに、まず自分が読むときに『こんなことを知りたいな』という気持ちを想像しながら、とにかく作り方を知りたい人に向けてくわしく書くように心がけています」。 -
② ワークショップ開催のコツや人気のコンテンツについて。
―UR都市機構様とのコラボレーションの際、先方からどのような依頼がありましたか?
「箕面粟生団地のモデルルーム制作を依頼されたのですが、先方からの発注は、とにかく簡単で、誰でも真似しやすく、見た人に『やってみたい!』と思ってもらえるように、DIYのキッカケを与えられるようなモデルルームをつくりたいとのことでした」。
―久米さんこだわりのテイストについて教えてください。インテリアやDIYで参考にされている情報や媒体はありますか?
「こだわりは特にない、と言えば語弊があるのですが、好きなものはなんでも取り入れていきたいと思っています。そのため、内装のテイストはその時期や気分によって違うかもしれません。参考にしているのは世界各国のガイドブックです。雑誌と違い、その国々のショップや町並みが詳細に描かれていてとても楽しく、かわいいイメージをもらえるのでおすすめですよ。私が現在、特に注目しているのは、アメリカのポートランドのテイストです」。―ワークショップを開催される際、心がけているポイントは? 利用者はどのような方が多いですか?
「私のワークショップに参加してくださる方は100%女性です。年齢は20代から60代まで幅広く、いろいろな方が来てくださいます。ワークショップでは必ずペアで挑戦していただくようにしています。一人で完成してしまうと達成感も少なく、ワークショップに参加される意味も軽減してしまうと思うので、二人一組になり、木材を押さえる人、ドリルでビスを打つひと、といった役割分担ができるように進行しています。そうすると、絆が生まれ2時間が終わるころにはとてもいい雰囲気になり、皆さんがそれぞれ連絡先を交換していたりと出会いの場にもなり、主催者である私たちもうれしく思っています。DIYはあくまでキッカケですが、人と人をつなぐコミュニケーションツールにも、また、家族の絆も深まるような気がしますね」。
―ワークショップでは、どのようなコンテンツが人気ですか?
「人気のあるコンテンツは、やはり木工! 家ではなかなか使えないような電動工具などに対し、“一度使ってみたい”、“ここで試してみて購入を検討したい”など、みなさんそれぞれ理由があるようです」。 -
③ DIYの今後について。
―DIY用の資材や工具は、主にどこで購入されていますか? また、木材など資材の使い方についての発想はどのように思いつくのでしょうか?
「私は主にホームセンターで購入しています。ホームセンターをぐるぐる歩いていると知らないものがたくさんあり面白く、『今度はこれを使ってみたいなぁ』と、発想力が刺激されるんです。しかし、重いものやホームセンターでは手に入らないものは、ネットショップで注文しています」。
―久米さんは今まで数々のDIY用の資材を使われてきたかと思いますが、何か困ったことはありましたか?
「私自身、DIYを始めたときは分からないことだらけだったのですが、最も困ったのが、“どの木材を使えばいいのか? そしてそれに合うビスはどれなのか?”ということでした。例えば、適切なビスの長さが分からず、『やっとの思いで打ったのに、全部裏に飛び出している!』といった失敗はしょっちゅうでしたね」。
―確かに、すべて自分で資材を組み合わせて使うのは難しいですよね。今後どのような機能サービスが求められると思いますか?
「そうですね。今後、カットサービスした木材をお家に届けてくれるようになればうれしいと感じますし、またそれに合ったビスが一緒に送られてくれば勉強にもなり、そんなサービスがあればいいなぁと切に思います」。―今後、DIYはどのような広がりをみせると思いますか?また、これから挑戦したいことはありますか?
「DIYはここ数年で大きなブームになりましたが、ここで終わってほしくないという気持ちです。自分が望む未来をつくるためにも、『とにかく自分でやってみよう』というチャレンジ精神が日本中に育てば素敵だなと思います。また、未来を担う子どもたちに、DIYの本質や大切を学べる機会が増えるといいですね。小学校や中学校でDIYについて知るきっかけをつくれる日がくることを願っています」。 -
④ まとめ。
久米さんがインタビューで答えてくれたように、DIYに関係するワークショップでは女性の姿が目立ち、昨今の日本での「DIY」のイメージは、「日曜大工」から「オシャレ」「楽しい」ものへと変化しているようです。
“DIY女子”と呼ばれる20代~30代の世代は、社会に出るころからずっと不況でしたが、モノ溢れるが豊かな時代に生まれ育ったため、物質的な豊かさよりも精神的な豊かさや自分らしさを重視する傾向があるといわれます。例えば、スマートフォンや名刺ケースをビーズで飾ったりと、いわゆる「デコる」(デコレーション)ことを得意とする世代です。
これまでの住宅やリノベーションは、建築業界主導でしたが、今後は主婦や母親目線など女性ならではの感性も取り入れながら、多様化する消費者のニーズに応えていくことが求められているのではないでしょうか。
そして、これはDIYだけでなく、例えば「塩麹」や「シリコンスチーマー」など、主婦ブログの情報が火付け役となり、大きなヒット商品となったケースも多く、主婦のクチコミや情報網は、販売促進にも大いに役立つといえます。今回取材した久米まりさんは、芸能人よりもリアルで、気取りがなく気軽に行えるDIYをブログで発信するスタイルが人気の理由だと感じました。彼女のように消費者心理に沿った情報を発信できる主婦ブロガーとタイアップし、生活提案や商品提案をする企業はますます増えていくことでしょう。
久米まりさんのブログ『Smile Happy Sweet Home』はとてもお洒落でステキなブログです。是非ご覧ください。

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